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型染カレンダーを制作している「桂樹舎」を訪ねました。

8月初旬、芹沢銈介型染カレンダーを制作真っ最中の富山県富山市八尾町の桂樹舎さんを訪問しました。
富山県八尾町は、毎年9月1日から3日にかけて行われる「おわら風の盆」という約300年前から続く幻想的なお祭りがあります。
今年も多くの観光客が訪れ、情緒あふれる踊りと哀調の音色に魅了されたようです。

越中八尾駅から車で5分ほどのところにある「桂樹舎 和紙文庫」。
木造瓦葺きの建物は、八尾町の山間部に建てられた小学校の分校を移築したものだそうでとても趣があります。
ここでは創設者である吉田桂介(1915-2014)さんのコレクションである、紀元前千年のパピルス、世界各国の紙が使われた調度品や生活用品、日本の古写経から江戸期後期の生活用品など。“紙”をテーマに幅広く集められた貴重な民芸品・工芸品が各部屋に展示されています。
芹沢銈介作の玉ねぎの暖簾(とても素敵!)や、型染絵本『妙好人因幡の源左』も見ることができました。

先代の吉田桂介さんは昭和初期、徐々に衰退していた八尾手漉き和紙の良さをもっと広く伝えたいと、和紙の普及に努めていました。その中で柳宗悦による「民藝運動」、芹沢銈介との出会いがあり、八尾の手漉和紙による「型染和紙」や「型染カレンダー」の制作が始まりました。
芹沢銈介型染カレンダーは、復刻版としてオリジナルを忠実に再現し、現在も一枚一枚和紙を漉き、手作業で制作しています。

2024年版は、1968(昭和43)年の復刻版となります。
1月はしめ飾り、9月は月見うさぎ、12月は雪ん子などなど、四季を彩る模様となっています。
現在の「暮らしにとけこむ型染ー芹沢染紙研究所の仕事ー」(9月24日まで)でも1968年の型染カレンダーを展示しています。
ご来館の際にはぜひ見つけてみてください。

スタッフ 栗田

和紙文庫見学後、社長の吉田泰樹さんにご案内いただき、工房での制作風景を見学させていただきました。
桂樹舎は大きく分けて製紙部門と染色部門があり、すべて職人の手作業による分業で行われています。

見学時はちょうど型染カレンダーの「糊置き」をしていました。
糊を乾かす風景。場所を取らないよう、糊が他にうつらないよう、工夫されています。

和紙の上に型紙を置き、一点一点糊置きをおこなっています。

紙漉き場では、色紙(緑色)を漉いていました。
一枚一枚、手作業で紙を漉いています。美しく強度の高い紙を漉くには熟練が必要です。この方は40年働いていらっしゃるというベテランさん。
水加減やトロロアオイの量を加減して、リズムよく漉いていました。所作に無駄がなく、すっかり見とれてしまいました。

漉き上がった紙を一枚一枚台の上にのせていきます。
水槽の中に水とともに入っているトロロアオイの根の成分により一枚一枚はがすことができるそうです。
100%天然素材の和紙。自然の力はすごいですね。

こちらは捺染を待っている型紙。光に透けてとてもきれいでした。

糊を置いた和紙に刷毛で引き染めをして色を付けていきます。

水元の作業。稲藁の根っこのブラシでゴシゴシと糊を落としています。
改めて、和紙は丈夫だなと感じました。

鯉のぼりの目や細かい部分などは手描きで仕上げられます。

和紙を干す道具も代々受け継がれています。
丸いボールのようなものは陶器でできており、木枠にはさまれたボールを上から下に転がすとやさしく和紙が挟まり、場所を取らずに乾かすことができます。

丁寧に作られた型染カレンダー、日々の暮らしを彩る素敵な一品です。